「傘持ってないの? じゃあ、一緒に入る?」
それを容易く言葉にできる人を心の底から称えたい。
あんな軽そうな見た目をしているのに、いざ片手で持とうとすれば一気に片手へと物質の重さが集まってくる。なんてこったい。
片手で傘を持とうなら、人の顔にがんがんぶつけるわ、傘が傾いて傘の意味すら無くなるわでそりゃもう大変。あと単純に腕が疲れる。明日は筋肉痛コースですかね。
だけど俺はそれでも相合傘がしたい。腕が犠牲になろうが、俺だけ傘に入ってなかろうが。これは男の夢であり憧れ。女の人と相合傘をした、なんて自慢できるに決まってる。童貞卒業した、なんてそんな下品な自慢なんかじゃなく声を大にして、なんならグラウンドに白線でどデカく書けるくらいには可愛らしい内容だと思う。
だから俺は声を掛ける。
「____あの、一緒に入りませんか?」
雲ひとつない、綺麗な青空が広がっている中で。
『相合傘』
6/19/2024, 11:53:59 AM