沢山のモブのひとり

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『落ち葉の道』

「ふふ…まるでレッドカーペットね」
そう笑う君の笑顔はまるで少女のように愛らしい
「お手をどうぞレディ」
「もう、レディって歳じゃないでしょ」
恥ずかしそうにそう返す彼女の手を取りエスコートする。
ザクザクと小気味よい音と並木道を行き交う人の声が
まるで音楽のように混じり合う。

「ちょっと!」
クルッと彼女を回転させ抱き寄せる。
突然の事に驚きながらも美しく揺れる髪とスカート
「ごめん、つい踊りたくなっちゃって」
クツクツと笑う僕に呆れたように息を吐く
そんな溜息さえもどこか楽しそうで
それがまたどうしようもなく幸せだった

もうすぐ冬が来る

そしたらここは純白の絨毯が敷きつめられて
キラキラと光るんだろう……
その時は君の手を取って何度目かも忘れた愛を誓おう。

「では気を取り直して、お手をどうぞレディ」
「今度は振り回さないでちょうだいよ、ダーリン」

11/25/2025, 4:59:18 PM