悪役令嬢

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『安心と不安』

私実は幼い頃に誘拐された事がありますの。
暗くじめじめとした場所に入れられ、
僅かな食料と水しか与えられずに何日間も過ごしました。

どうやって助かったかですって?
長くなるので割愛させていただきますが、
ひとえにある少女のおかげですわね。
その子は私と同じ牢屋に閉じ込められておりました。

私が不安に駆られている時、
その子どもは私の手を優しく握って、
たくさんのおとぎ話を聞かせてくれました。
彼女の声と温もりは私を安心させてくれたのです。

それから私たちは見張りに気づかれぬよう
毎日少しずつ穴を掘り進め、
とうとう逃げ出す事に成功したのです!

途中で追手に追われその子とははぐれてしまいましたが、
私は農村で働いていたご夫婦に助けてもらい、
そして、今こうして優雅に紅茶を飲んでいられるのです。

あの子がいなければ私は早々に何もかも諦めて
どこかに売られていたかもしれませんわね。

不安や絶望に苛まれている時に
安心や希望を与えてくれる

そのような存在に人は強く惹かれるのでしょう。
人々が宗教や推し活にはまるのも無理ありませんわ。

あの子は今でも私の心を暖かく灯してくれる
小さな炎ですわ。

もし生きていてくれたなら、
もう一度彼女に会いたいですわね。

1/25/2024, 12:10:57 PM