ストック

Open App

Theme:鋭い眼差し

狙撃の腕を買われて軍に入隊した俺の指導をしてくれることになったのは、軍内でも特に優秀なエーススナイパーの先輩だった。
話を聞いたときはどんな恐ろしい人物だろうと不安に思っていたが、実際に会ってみると明るい笑顔が印象的な優しい先輩だった。
「よろしく。早く一人前になって、俺を楽させてくれよ」と手を差し出してくれたことは今でも覚えている。

彼は面倒見がよく、いろいろなことを教えてくれた。休みには飲みに連れていってくれることもあった。
そんな彼は、一度戦場に出てライフルのスコープを覗き込むと表情が変わる。
獲物を狙う鷹のような鋭い眼差し。
最初の頃は非情さを秘めたその迫力に思わず気圧されてしまったが、慣れるにつれて彼のその眼差しが頼もしく思えた。

やがて、俺が一人前になって準エースと呼ばれるようになる頃、彼は突然姿を消した。
上官の話では、彼は敵軍に寝返ったという。

そして今、俺が覗いているスコープには彼の姿を捉えている。
俺も、今は彼のような鋭い眼差しをしているのだろうか。
そんなことをふと考えながら、トリガーを引いた。

10/16/2023, 1:17:59 AM