鶴づれ

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花咲いて


 夏の青空の真下で車を走らせていると、ふと視界の端に鮮やかな黄色が映った。

「わあっ!ひまわり畑だよ!」

 助手席の君が、それこそひまわりのような明るい声をあげる。隙を見て彼女に視線を移すと、弾けた笑顔が眩しかった。
 窓の奥、橋の下に咲くひまわりを、そのまま移し取ったよう。

「ねぇ、見える!?…あっ、でも、運転中なの忘れてた!ごめん!」
 もう目線は真っ直ぐ前に戻したのに、彼女のちょっと慌てる様子が目に浮かぶ。

「大丈夫、さっき見たよ。綺麗だった」
 君のように、なんてキザな台詞は言えなかった。

「見えた?よかった。私、ひまわり大好きなんだよね〜。ここ通ってくれてありがとう!」
「どういたしまして」

 むしろ、喜んでくれた君にありがとうと伝えたい。君の、嬉しそうな顔が好きだから。

 一つ、間をおいて、覚悟を固めた。

「…なぁ。降りて、もっとよく見てみないか?」
「いいね!行ってみようよ!」

 バックミラー越しに、君の鮮やかな笑顔が見える。

 ここを通った理由は二つ。
 単に、君の笑顔が見たかったから。
 もう一つは、ひまわりが咲いたら、君に好きだと伝えたかったから。

7/23/2023, 1:22:25 PM