夢幻劇

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願いが1つ叶うならば


ずっと、自分は男の子だと思っていた。

赤より、青。
プリキュアより、仮面ライダー。
スカートより、ズボン。
リボンより、恐竜。
可愛いものより、かっこいい物が好きだった。

長く伸ばされた髪は鬱陶しくて、女の子みたいで、
嫌気がさして、泣きながら自分で切った。

驚いた母さんがガタガタになった髪を短く整えてくれて、
いくらかはマシになったけど、ばあちゃんに「かわいいね」って言われる度に、そうじゃない、と泣き叫びたくなった。

小学校に入ってすぐは、女の子より男の子とばっか遊んでた。
でも年齢が上がるにつれ、ハブかれることが、無視させることが、悪口を言われるのが、自分のものがなくなる事が多くなっていった。

気持ち悪い、おかしい。何度も何度も言われた。


中学に上がってからは、そういうのはもっと多く、いやらしいものに変わっていった。

いじめのターゲットにされるのなんて、時間の問題だった。

自分はおかしくなどないと、何も間違ってないと、恥ずべきことは何一つしていないと、ただ堂々とするしかなかった。

いじめに、自分のことをバカにしてくる奴らに、負けたくなかった。


ある日の授業で、願いが1つ叶うならなにを願うか、作文を書くように言われた。

願うのはただ一つだけ。
この間違えた身体を、正しいものへなおしたい。
当たり前な身体で、当たり前な生活を送りたい。

これだけ。


そのために今世はおしまいにする。

かあさんに悪いとは思うけど、ただ思うだけだ。


次は正しい身体で生まれてこれますように。



【願いが1つ叶うならば】
ちょい鬱(?)展開

3/11/2025, 7:51:09 AM