リラ

Open App

【晴天】
お題:柔らかい雨

 「私ね、魔法が使えるの」
二人だけの秘密よと微笑んだ女の子に僕はなんて返したのかもう思い出せない。
 魔法が使えると言った女の子は周りから好かれていて、いわゆる人気者だった。それに対して僕は友達と言えるような人はいなくていつもひとりぼっちだったらしい。らしいというのももう随分と昔のことで記憶がないからだ。じゃあなんでそんなことがあったのかわかるかといえば日記が出てきたから。自分が小学生の頃に書いてた日記だ。その日記によれば友達のいない僕が一人で公園にいたらその女の子が仲良くしてくれたというものだった。
 魔法を見せてもらったとかいてあったがその魔法については詳しく書いておらずただただすごかったと。その日記には自分が描いたと思われる絵がついていて雨の中笑顔でいる女の子と男の子がいた。雨が降っていたのに公園に行くのだろうか。そんな疑問をふと抱いた。幸い日付が書いてあったからスマホで天気を調べた。天気は晴れ。雲ひとつない晴天だったらしい。もしかしたら、雨を降らすという魔法を見せてもらったのだろうか。一人でいた僕を笑顔にしてくれたのはあの女の子の気持ちがこもった柔らかい雨だったのかもしれない。

11/6/2023, 12:43:07 PM