No.29:さぁ冒険だ
「ね、僕と一緒に逃げ出しちゃおうよ」
何時もは真面目を装ってる此奴が、急にそんな事を言い出してきた。
「...いや、もうすぐ授業なんだが?」
今は休み時間で、あと数分もしない内に授業開始の鈴が鳴る
そりゃあ面倒臭い授業なんて抜け出したいが、そんな事をしたら職員室直行案件である
「えー、良いじゃない。君だって前サボってたじゃない」
そんな事も分かってないのか、少し不貞腐れたように口を開いている。
いや、だから実体験なんだって。
一度屋上でサボっていただけで2時間も放課後居残り説教をされたのだ。あんな経験はもうコリゴリである
「今は自重してるわ、怒られんの面倒臭いし」
「なら僕が無理やり連れ出したって事にすればいい」
「日頃の行い的に俺だって思われるだろ」
「ニッコリ笑えば聞いてくれるよ?」
「お前のそれは圧って言うんだよ」
「まぁまぁ、気にしない気にしない♪」
カラカラと笑った彼奴は、俺の返答も聞かず手を掴むと、何食わぬ顔で下駄箱前まで引っ張られた
「っおい...!だから俺は...!」
「”自重“してるだけで、逃げ出したくないとは言わないじゃない」
「ッ、」
「ね?本気で嫌なら手を振りほどいて見てよ」
まるで俺の本心を見透かす様に問う此奴に腹が立つ。
真底、癪に障る...が、俺は手を振り解け無かった
...あくまで、授業が面倒臭いと言うだけである
「ふふ、じゃあ行こっか。ちょっとした穴場スポットがあるからさ♪」
「つまらん場所だったら鼻で笑ってやるよ」
「大丈夫、君もきっと気にいるよ」
そうして振りほどかなかった手を握り直され、開始の鈴の音を背に、俺達はちょっとした逃走劇を初めたのだった
2/25/2025, 12:16:30 PM