テラ

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降り止まない雨

肩を叩かれて振り返る。誰もいない、そういやこの前人類は絶滅したんだっけね、っていう怖い話。本当はそんなことは起こっていなくて、雑踏で立ち止まる私を迷惑そうな目が一瞥して一瞥して一瞥して、でももう忙しいから通り過ぎる。ごめんね。邪魔だな。君が助かりますように祈っているよ。始業時間が迫っているんだ、それではね。そう言って同じ姿が同じ方向に進んでいって、消えてしまう。私の知らないどこかにいるよね。私の知らない幸福を享受しているから、大丈夫なんだよね。そうだといい。私も液体みたいな気持ちで同じ方向に歩いていく。

5/25/2024, 1:45:10 PM