#6 麦わら帽子
私は今でも鮮明に覚えている。
お母さんが買ってくれたのって、自慢の麦わら帽子を被った君は、とても可愛かった。
でも、突然いたずらな風に盗まれてしまった。
気まぐれな風に遊ばれながら、麦わら帽子を追いかけて。
追いついたと思ったら、木の上に引っかかってしまった。君の目にうっすらと涙が浮かんでいた。
そこに、そう。あの人がやってきて、いとも簡単に帽子をとったんだ。
はいどうぞ、って、爽やかな笑顔を見せて、君に帽子を手渡した。
君は希望に満ちた、世界で一番幸せなんじゃないかと思える、満面の笑みでありがとう、と言った。
私はその横で見ていた。
いいな。
なんて。
君の心に、あの人がいることぐらいわかっていた。
少し苦い、思い出。
ただ、それだけだ。
もう、今は何の意味もなさない。
__結婚おめでとう。
お幸せにね。
8/11/2024, 11:41:44 AM