ストック1

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私は七色という名前なのだけど、両親が虫嫌いで、虹という漢字を使いたくなくて、それでも二人が好きな虹を意味する言葉を名前にするため、この名前にしたらしい
両親は頑張って考えたのだろう
その努力はすごいと思う
だけど、私はこの名前があまり好きではない
語感や漢字の形のせい、というわけじゃなく、そもそも虹という現象が気に食わない
私はひねくれているので、雨という憂鬱な天気のあとに、耐えたご褒美と言わんばかりに出てくる虹に、辛いことを乗り越えた先にいいことがあるから頑張るべきだ、というような説教臭さを感じてしまうのだ
自分で心底悪意のある見方をしていると思う
この点だけ切り取ると、かなり性格が悪い思考回路だ
両親は虹好きの虫嫌い
でも私は、虹より虫のほうが好感を持てる
果たせない可能性が高くても、とても小さい体で、自分の存在を子供に繋ごうと必死になって生き、生存競争の中で一生ひたすら戦い続ける虫たちは、とてもすごいと思う

ある日、私の友人がきれいな名前だと言ってきた
私は自分の名前が嫌いであることと、その理由を話した
友人はけっこうな声量で笑ってきたけど、そんなに面白いとは思えない
性格悪すぎとも言われた
まあ、それは自覚してる
一通り笑った後、友人はでもさ、と自分の考えを語りだす
曰く、逆だと
虹を作るために雨を降らしているのだという
人に虹を見せるため、雨を降らしているけど、成功率は高くない
それでも、きれいなものを見せたい一心で、頑張って雨という制作過程を経ているのだと
私はその考えに乗ることにした
即座に手のひらを返す
本音を言えば、自分の名前が好きじゃない自分自身を残念に思っていた
そんな中で、友人が虹に違う解釈を提示してくれたのだ
その解釈に賛同しよう
私自身、その解釈がしっくり来たというのもあるし
いや、むしろそれが一番大きい理由だ
なんだか友人のおかげで、自分の七色という名前を好きになれそうな気がした

3/26/2025, 11:03:18 AM