村人ABCが世界を救うまで

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どうして人肌はここまで落ち着くのか。
寝入る直前に、隣のベッドからしくしくとまるで子供のようなすすり泣きが聞こえてきたのだ。
嘘だろうと思ったが、彼女の顔を確認して涙が一粒こぼれ落ちた。一体誰を思い出しているのか「行かないで」と泣いている。
普段男言葉を扱い、特別に愛想もよくない彼女。
「行きませんよ」
寝入りに強い薬だったため、ぴくりとまぶたが動く。だが動くだけだ。そっと手を繋ぐと握り返してくる。本当に自制が利かなかったと後で謝ろう。

額にキスをしたら、彼女の唇に目が行く。
「かず、き…?」
ぞわりとした。あまりに甘い声。
「寝ていいですよ…」
どうして自分のことは恐れないのだろう。
自分だけは特別だとそろそろ思ってもいいだろうか。





まだ春は遠くて室内の温度はぐっと落ちた。部屋の暖炉の火は落ちてしまっている。彼女の肩が震えている。
「寒い、ですか」
こく、と顎が動くから、少し躊躇ってから隣に身体を滑り込ました。身体の後ろからなら非難も受けまいとそっと密着させる。少しでも暖を取れたら。自分は湯たんぽなんだと言い聞かせる。普段だって、僕らはそんな……と誰かに心の中で言い訳をしていた最中だった。

どうして抱いてくれなかったの。

小さな唇がそう呟いて一瞬理解が追いつかない。急に迫り上がってくる熱にたまらず力の限り抱きしめると、彼女と見つめ合うことになる。唇が半分開いている。
「抱いて、欲しかったんですか?」
「そう。言えなかった…私はこんな…」
卑下するような言葉の予感がした。無視をして顎を捉える。
「知りませんよ…」
そっとキスをする。思えば暴れ出しそうな感情に何日も耐えてきた。
抱きしめた身体は思いのほか柔らかい。首筋に唇を這わすととんでもなく色気のある声音が漏れてきた。
「んん…っ」
どうしてそんな声を出すんですか。
何度も角度を変えて唇を塞いでいると、やがて彼女のほうが舌を細かく使い出した。

脳が麻痺していく感じ。そっと手のひらに余るほど小さな胸を壊さぬように包んでいたら、突然理性が消し飛んだ。



刹那

4/28/2026, 10:12:20 PM