新進気鋭の作家が手掛けた、前衛的アートのような光景。言葉の中には決して収まりそうもない。
「ねぇ……」
これでよかったんだよね?と小さく呟いた声は彼女の耳には届かない。男の頬にはとめどなく涙が伝う。
つややかな赤が、小さな水溜りを作る。そのまわりには無惨に切り取られた紫陽花が並べられていく。
初めて贈ったネックレス、誕生日にもらった万年筆、旅行の記念にお揃いで買った切子のグラス。大切な思い出も一緒に飾り付けられた。
男はかばんから、彼女の大切にしていたカメラを取り出すと、自らが作り出した景色に向けてそのレンズを構えた。
異様な光景、としか言いようのないそれ。ただ静かに、シャッターを切る音だけが響いた。
〉目にしているのは
「お題:あじさい」の続き。
愛故に未遂か、気が触れて実行か。
あれを書いてた頃は自分でも分からなかったけど
このお題ならこの結末かな、と。
7/14/2022, 1:13:59 PM