みみかゆい

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あの日この場所で、
僕たちは15年後にまた、ここに集まることを約束した。

スポーツ万能だった俊介は、
有名な飲食店で働いているらしい。
給料もそれなりによく、来年には主任という役職に昇進するのだが、なんとそのタイミングで、今の彼女にプロポーズを企んでいるようだ。

昔付き合っていた彼女ともお似合いで、
良いカップルだと思っていたのだが、ついに新しい道に進むことを決心したのだろう。
いつか2人でお店を開くんだと言いながら、とても幸せそうに笑っていた。

学年で1番勉強ができた聡は、
今は医者の卵として勉強漬けの日々だという。
あれだけ勉強をしていたのに、こいつはまだ勉強をしているのかと少し呆れてしまったが、
他のみんなはどこか尊敬と嫉妬のような眼差しで聡を見つめていた。

医者を目指すにはコミュニケーション能力も必要のようで、どちらかと言うとそっちの方をメインで学んでいるんだ、と聡は恥ずかしげに頭をさすってみせる。

やたら女子人気が高かった圭一は、
なんと超大手外資系企業の営業マンとして働いていたらしい。
しかし、同僚の女の子に手を出しすぎて、とうとう先月仕事を辞めることになってしまったと衝撃のカミングアウト。

昔から、月一くらいで新しい彼女が出来るような奴で、
少し嫌な予感がしていたのだが、
まさか仕事をクビになってしまうだなんて…本当にどうしようも無い男だ。
弁護士やら慰謝料やらと、他のみんなに何やら色々と難しい話をしていたので、どうやら単純な話では無さそうだ。

最後に圭一は、女の子の口説き方ならいつでも聞いてくれと言っていたが、他の2人は乾いた声で笑っていた。


みんなあの頃の面影を残しつつも、やはり大人になってしまったようだ。
僕には難しくて、よく分からない話ばかりだった。

それでも、本当に15年後、またここに全員集まれるなんて思っていなかった。
だからそれだけでも、とても嬉しかったんだ。

「明人は、今頃どうしてるかなぁ」
 
3人は、ぼんやりと空を見上げていた。

2/11/2024, 3:24:39 PM