雨が降り、風もよく吹いた。桜はだんだんと鮮やかな緑色へ変わりつつある。足元だけは積もった花びらで元の色彩を保ったまま。瞬きをしたらゆめまぼろしのように消えてしまいそうな、儚い、無色の世界を足元に広げ、瑞々しい若葉は天に向かって芽吹いている。相反する二つの世界を繋いでいるのは大樹。俺とあんたの世界も、これくらい強固に繋がれたら。太い枝に腰を据え、幹に耳を澄ませる。あんたの声はどんな音だろうか。
4/19/2024, 3:08:06 AM