yorozu

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彼とは大学のサークルで知り合った。
彼はサークルの活動で一人になっていた私に声を掛けてくれた。それから徐々に仲良くなり、お付き合いすることになった。
恋愛経験の無かった私は初めての彼氏に浮かれていた。彼は私の我儘をなんでも嫌な顔1つせずに応えてくれた。
私はそんな彼の優しさに甘えていた。依存し過ぎていたのだ。

ある日彼の家に行くと一人暮らしの部屋に金色の長い髪が落ちていた。
ココ最近、私は彼の家を訪れてはいないのに。
ふと友人の彼氏が浮気相手を家に連れ込んでいた話を思い出す。
まさかとは思ったが、私の中で渦巻き始めた疑念は日が経つにつれその大きさを増していった。

耐えられなくなった私は、彼が家に来た際に聞いてみたが、何やら歯切れが悪い。
私はますます不安になり、遂に言ってしまった。
「浮気なんて最低よ。さようなら。」
彼の荷物を乱暴に放り出し、彼の話もちゃんと聞かぬ間に追い出してしまった。

数日後、彼の姉を名乗る人物から連絡があった。
「彼が交通事故で亡くなった。葬儀に貴方も出て欲しい」と。

私は突然の事に目の前が真っ白になった。
少しして私は酷い後悔に襲われた。
私は彼女に、つい先日までの事も全て包み隠さずに話した。
彼女は
「知ってるよ、弟から相談されてたし。だから最後ぐらい仲直りして欲しいから。」
と優しく落ち着いた声でそっと呟く。

後から聞いたが件の髪はどうやら彼女のものらしく、相談するために呼んでいたという。

さよならを言う前にちゃんと話を聞いておけばよかった。
私はそう後悔しながら彼女と彼のお墓の前で今年も手を合わせている。

8/21/2023, 7:06:57 AM