恋人の視線が微妙に痛い。
「だから言ったのにー」
ほんの少し頬をふくらませていた。
と、言うのもお散歩していたら、上からなにか聞こえたから足を止めて顔を上げた。
そこには子猫ちゃんが木に登っていて、どうやら降りられなくなっていた。
私は彼の静止を聞かずに登ってしまった。
そうしたら子猫ちゃんが腰を引いてしまい、怖がらせないように私ももう少し登った。
何とか怯えさせずに子猫ちゃんを抱っこして周りを見渡すと思ったより高くて。子猫ちゃんを抱っこしたまま降りるのはかなり難しい……かも。
ど、どうしよう。
私の表情を見た彼がジト目を送ってきた。
うぅ……。
彼が私を止めたのは、こうなると察していた。何より彼のお仕事は救急隊だから私より彼の方が適任だったのに私が彼の声を聞かずに登ってしまった。
彼は眉間のシワを寄せていて、深い息を吐いた。
「もう、だから俺止めたのに」
彼は一度うつむいてから、両手を広げて私に顔を向けてくれた。その表情は私の大好きな太陽みたいな笑顔。
眩い表情に胸が高鳴る。
「受け止めるから、飛んで」
おわり
四二九、飛べ
7/19/2025, 2:37:57 PM