作家志望の高校生

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君は晴れ男だった。君が参加する行事はいつも晴れていて、空は一片の雲さえ見当たらなかった。それに、いつも皆の中心にいて、側にいる人を皆照らす、本当に、太陽みたいな人だった。
僕はその反対で、誰より酷い雨男だった。遊びに誘われても、僕がいるといつも雨だからいつからか誘われなくなった。話すのも下手だから、僕に話しかけてくれるのなんて本当に君くらいだった。雨さえ照らせるほどの光を持ったのは、太陽だけだったんだ。
だから、皆錯覚していた。太陽はいつまでもそこにあって、いつまでも温かく、優しく僕らを照らしてくれると。僕は知らなかった。太陽が時に、この身を焦がすほどの熱でもって呪うことを。太陽には、近付きすぎちゃいけなかったんだ。
そのことに気が付いたのは、君が居なくなってからだった。あれだけ明るかった君が、僕の頭くらいの壺に収まってしまった。いつもカラフルな色に囲まれていた君に似合わない、白と黒がその場に広がっていた。僕は、君が居なきゃダメなんだ。
君の葬式は雨だった。晴れ男だった君は、死んだら効力を失うらしい。雨男の僕が参加したせいか、晴れ男の君が死んだことを天が悲しんだのか、先が霞んで前も見えないくらいの大雨だった。
太陽が滅んでしまってから、僕は仄かに残った熱で酷く焼かれた。君が綺麗に埋めてくれた穴の中身が全部焼け落ちて、その灰さえ残さず風がさらっていってしまった。僕には何が遺されていたのか、もう分からない。
あれだけ眩しかった君を失っても、皆はすぐに立ち直った。他に埋めてくれるものがあったから。でも、僕は違った。君の遺した熱が冷めてしまわないように守りたいのに、僕が降り続かせる雨はそれを許さない。僕が生命活動を続ける限り、君は僕の中から失われていく。そんなの、許せないじゃないか。
月は太陽に照らされて、ようやくその姿を見せられる。でも、その光は永遠じゃない。間に別の邪魔者が入って、その温かな光を遮ってしまう。非力で無力でどうしようもない月は、太陽に焦がれながら邪魔者の陰に食われるしかない。けれど、それだけじゃ嫌だった。
晴れだけじゃ田畑は乾ききって枯れてしまう。けれど、雨だけでは川も海も暴れ狂って、他の全てを飲み込んでしまう。僕と君は、どちらか一方が欠けたら終わりだったんだ。
だから、僕は君に逢いに行くことにした。

テーマ:雨と君

9/7/2025, 6:14:57 PM