22時17分

Open App

手を取り合ってみないとわからないことが多い。
実際握っているこの手はとても小さい。
寿命は私の数千分の一だろう。
長命種である私たちからすれば矮小な種族であり、瞬きする程度の時間で生死が連続する。
空気のようによくわからない具合だ。

人類と呼ばれる者たちが作り上げた歴史は血なまぐさい。血で血を洗い、奪い合い、同族で争い、他種族を巻き込む世界大戦を乱立させてきた。
今はだいぶ反省しているようだが、一部地域は戦争を継続しており、予断を許さない。
帝国と皇国。いつもいがみ合う大国だ。

……そのための、同盟である。
一方は人間の国。もう一方が魔物、それも龍の国。
種族の超えた同盟。
私達にはメリットは少ない。個人的には意味のない。
同族の問題であれば同族で解決してもらいたい。
ドラゴンという、人間からすれば神のような種族に頼り、場を鎮めるための手段……そのためにこの対談の機会を持ちかけていたのではないか。

あるいは、私たちの竜の牙、竜の爪、皮、鱗。
これらは希少的かつ高値で取引され、この機会を逆手に取り、襲撃を目論んでいる。
そう情報を流してきた人間の小国もいる。
手を握るまでそう思っていた。

しかし、しかし。
この目は特別なようだ。
そういるわけではない目。覚悟の目。
人の頂点に立ち、束ねるという目。

ふっ、いずれこの男が……
そうまぶたに未来を描こうかと思ったがやめておく。

「いいだろう。まずは、降りかかる火の粉を払わなければな」
私は身体を翻し、かの者に背中を見せた。
「乗れ」
特に不意打ちをされることもなく、飛び上がって背中に乗った。
「……恩に着る」
「容易いことだ」
私の咆哮とともに空へと跳躍。
そして大空へと羽ばたいていく。
目指すは帝国の陰謀。空の国。
まさに剣士と龍の物語が始まろうとしていた。

7/14/2024, 3:18:06 PM