吹奏楽が好きだった。
今はなんとも言えない。ただ、好きではない。楽しい時もあるけれど、それ以上に苦しい。
私は、コンクールのためだけに楽器を吹いてるんじゃないのに。
みんなひたすらコンクールの譜面をさらっている。有名でもなんでもない、ただただ難しく、歪な和音で構成された曲。私はどうしても、好きになれなかった。
それでも私は楽器が好きだ。私の楽器、トランペットが好きだ。
休日、河川敷にひとりで吹きに行く位は。
ふと気づいた、少し遠くから聞こえる澄んだ音色。向こう側には、同じパートの先輩がいた。一番いい音の、あの先輩。
先輩は暫くは基礎練をしていた。
途中から、よく知るポップスの曲に変わった。
太陽に照らされて、金色のトランペットが輝く。
先輩の音も、輝きを孕んで響いていく。
今この瞬間は、間違いなく吹奏楽が好きだ。
2/17/2025, 10:43:37 AM