題 やさしくしないで
期待させないで
私は机の向かいで微笑んで私を見る高坂に非難の目を向ける。
高坂はなに?という顔でさらに微笑む。
「高坂って女の子に人気あるよね」
私はついつい不満を口にしてしまう。
「え~?そうかな?でもさ、女子男子に関わらず魅力的な人と仲良くしたいって思わない?話してて楽しいし。僕はカナミと話してる今楽しいよ」
「うん、そういうとこよ」
私は思わずツッコむ。
「え?どういうこと?」
楽しそうに笑う高坂を恨めしそうに見る私。
こうしてよくわかんない思わせぶりなこと言ってくるから、どうしていいか分からなくなる。
そして、その被害者の会は私の周りの女子に広がりつつある。
いつも褒めてくれるし、よく気がつくし、話してて楽しいんだけど、みんなもそう思ってるからな。
私に優しくするな、とさえ思ってしまう。
優しすぎるんだもん、高坂って。
「何か怒らせた?そうならごめんね、せっかく話すなら楽しく会話したいし、言いたいことは言ってね」
「⋯ううんいい」
というか、高坂みんなに優しすぎるからもっと冷たく接してなんて言われても困ってしまうだろう。
そんなこと望んでるわけじゃない、かといって、私にだけ冷たくしてなんて言うのもやだし、されるのもやだ。
結局どうしたいのかなぁ。
私は自分の頭の中の混線を解けないでいる。
「いいかぁ、それじゃ困るな、何か思ってることあったら言って」
高坂は机に肩肘をついて上目遣いで言う。
反則っ、反則技使ってきた!
⋯でもこんな風に食い下がってくるの、珍しいかも?
「いや、高坂みんなに、優しいじゃん?女子も男子も。女子が高坂好きになってる子多いから、ちょっと周りのみんなの事心配になって」
「えー。そうなの?でも、好きになってくれるのは嬉しいよ」
高坂はびっくりした顔をした後ニコッと天使みたいな顔で私に笑いかけた。
「それはそうなのかもだけど、みんな高坂に恋しちゃってもライバル同士喧嘩しちゃったりとか、振られて悲しい気持ちになる人が増えたりするでしょ?」
現に私の友人に高坂くん気になってるって言われてハラハラ。
友人とライバルになって気まづくないし、これ以上高坂好きなライバル増やしたくないよ。
「ケンカ⋯は困るけど、僕の態度ってそんなに勘違いさせてるの?」
「うん」
私はハッキリと頷いた。これは断言出来る。
「そっか~。じゃあ、恋人ができたら勘違いされないかな?」
「みんなに言えば勘違いされないかもね?」
私はそう言いながら、今度は恋人になる人に他の人に優しすぎって言われるかもね、と思いながら。
高坂に恋人⋯でもやっぱりそれは嫌かなぁ。
「じゃあカナミ、付き合って」
「え?なに?恋人探しに?」
いきなりそんな提案をされて私はビックリする。
恋人探し手伝うなんてそんなん嫌だと思いながら。
「違うって、僕とお付き合いしてください」
改めてちゃんと座って私に言ってくる高坂。
ガヤガヤする教室の中、非日常が私と高坂の周りをとりまく。
「え?」
私がビックリして固まってると、高坂は重ねて言う。
「僕のこと嫌いかな?」
「嫌いじゃないけど⋯この流れで告白って、私がいれば他の人に勘違いされないから告白したってこと?」
そうだよね、今までの流れからいくとそう思っても仕方ない気がする。
「違うって。前からカナミのこといいと思ってたんだ」
「そーなの?えっ、びっくりした⋯⋯」
私は突然すぎる告白の数々に頭がフリーズしてしまう。
「で、どう⋯かな?」
高坂は返事が気になるようで催促してくる。
「⋯いいよ、私も好きだから」
私はそう答える。
誤魔化す必要だってないしね。
「やった、ありがとう。じゃあこれから恋人ってことね」
高坂の言葉に、私は照れながら頷く。
「うん⋯」
やさしくしないでほしかった。
他の子にも私にも。
でも、こうなってくると話は別。
私にだけたくさん′優しくして欲しいな。
私はそんなげんきんなことを考えながら高坂に微笑みかけた。
2/3/2025, 12:36:02 PM