シオン

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 快晴だった。
 いつも通りの快晴。
 そんな空模様で弾くピアノはそもそもピアノが屋外にあることもあって、弾き心地は最高なのだが、こう毎日こうでも飽きるというのはある。
 要するに刺激がないのだ。
 確かに権力者との話は刺激がある。彼女の機嫌を損ねないように話そうとする、とかそういう点でもわりとハラハラはする。
 だが、そういうんじゃない、なんというか気分転換が欲しい。
 もっとこう、心躍る何かが欲しい。
 殺伐としたこの世界に何か楽しさが欲しい。
「やぁ、演奏者くん♪」
 僕のそんな気持ちとは裏腹に彼女はやたら上機嫌で現れた。
「どうしたんだい、今日は」
「いや、特に」
 上機嫌で笑顔だった顔を真顔に戻して彼女は応じた。
「⋯⋯どうしたんだい」
「同じことしか言わないじゃん。やっぱり退屈なんだよ」
「⋯⋯⋯⋯きみもか」
「『も』ってことは演奏者くんも?」
「ああ」
「あはは、こんなに綺麗な空でこんなに天気いいのに2人とも退屈してるってめちゃくちゃ面白いね」
 権力者はそう言って笑って、なんだかその顔を見れただけで今日は満足できた気がした。
 ⋯⋯⋯⋯刺激、こっちの方向性もいいのかもしれない。

4/13/2024, 3:13:26 PM