【静寂の中心で】
ふと見上げると、綺麗な夕焼けが空を満たしていた。世界が綺麗であることを知る度、私は君に宛てて物語を書きたくなる。
輝くオレンジ色の陽光。そこから生み出される神秘的なグラデーション。夜の青に雲が靡いていて、雲だけが太陽の光を拾って桃色になっている。まるで水面のような空をスマホのカメラ越しに捉えてから、私は思わず息を吐いた。
教えたい。この光景の綺麗さを。
知りたい。君がどう思うのかを。
叶うのなら、それを隣で聞いていたい。見ていたい。
叶わない願いを胸に、室内へ戻った。
まだ家族も帰っていない。秒針の音だけが聞こえる部屋の入口に座り込んで、君に宛てて限りない世界を綴っていく。
いかに君が教えてくれた世界が綺麗であるのか。君のおかげで、どんなに綺麗に見えるようになったのか。……結局、綺麗な世界を書きたいのは、君への想いを綴りたいだけなのだと思いながら。
不思議と、騒がしいだけの動画を見ていた先程より、静けさでいっぱいの今の方が感情でいっぱいになっていた。
もう日は落ちて、残るのは夜だけだ。
静寂の中心にいることを感じるこの時間。好きだな、と思った。
10/8/2025, 8:46:51 AM