頭をよぎるのは、一番幸せだったかもしれない、あの日。
「俺、君のこと好きなんだ。ずっとずっと好きで、君は違うかもしれないけど、諦めきれなくて」
夢なんじゃないかと疑ったけれど、わたしを抱きしめるぬくもりも、少し苦しさを感じる力も、間違いなく本物で。
わたしには手の届かない人だと思っていた。
はじめて好きになった人と想いを重ね合わせられるなんて、思っていなかった。
――ねえ、やっぱり、夢だったの? それなら早く覚ましてほしかった。
あなたの心が、別の場所にいることなんて、とっくに知っているの。
わたしが共に歩みを進めようと手を差し伸べても、渋ったままやんわり拒否をしていること、気づいているの。
それなのに……中途半端に愛を囁いてくるせいで、断ち切れないでいる。
ああ、早くこの悪夢から逃れないといけない。
手遅れになる前に、はやく。
お題:脳裏
11/10/2023, 4:14:03 AM