私は、私の半生を懐疑的に振り返る。
なぜ物足りなさがあるのだろうかと。
金はある。妻もいる。子供も成長した。
家もあり、仕事も満足している。
それなのに。
これは、満ちたものが持つ甘えというものなのだろうか。
満足しているが故に、不足を求めているとでも言うのだろうか。
否。否である。
決して否だと心から。
会社の喫煙スペースで煙を吐き出しながら、私は頭を振った。
そうだ。
あのとき、私は流れに身を委ねて、自分の答えを他人に任せたからではないか。
進学を。就職を。恋愛を。そして。
その場面で、出来る事の最大限をやってきた自負はある。
しかし決断をしなかった。
故に。
故にと、私は心に虚ろを抱えているに違いない。
タバコの灰が地面に落ちていく。
私は、喫煙スペースを出た。
さあ面接だ。
何を聞くべきかは決まっている。
なぜうちを選んだのか、と。
自分は、自分で選んでいないことをひた隠しながら。
著そらのけい
6/5/2022, 2:50:46 PM