カレンダー (9.11)
どこのどいつが破ってんだよ
悪態をつきながら鞄を肩に引っ掛ける。彼がイラついているのは図書室の日めくりカレンダーのことだった。
図書委員しかめくれない、昭和の家にありそうなデカデカと黒い数字が書かれた紙。薄っぺらいそれをぴいっと破るのはさぞかし爽快だろう、そんな出来心で月曜の図書委員になった。もちろん、金土日で3枚めくれるから。
靴のかかとを踏んで、教室を外から眺めながら唇を尖らせる。
それなのに一回も破らせてもらってない。というよりすでに破れている。ほんのちょっとした思いつきだったが叶わないと無性にイラついてきた。
むしゃくしゃしながら図書室の前を通ろうとしてあっと声を上げる。バタバタと駆け寄って窓を開けた。
「おまっ何破ってんだよ!」
びくっと振り返った少女は大きく目を見開いていた。
「今日はまだ金曜だろ!破ってんの土曜じゃん」
はぁ?と言いたげな顔で持っていた紙を捨てている。
「俺月曜担当なの。日めくり破りに学校来てんのに」
必死に言い聞かせると少女はいきなり腹を抱えて笑い出した。
「ごめんごめん、こんなガキっぽい高校生がいるなんて思わなかったわ」
ひぃひぃ涙目で言いながらこっちに歩いてくる。日差しが差し込んで髪がキャラメル色に光っていた。
「来週は残しとくよ、月曜君」
なんだか一気に顔が熱くなって、俺は逃げるように帰ったのだった。
9/11/2023, 12:26:10 PM