足り過ぎた贅肉

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1軒目2軒目は自慢の特技で吹き飛ばしたが、どうもこの3軒目には通用しないようだと諦めた。
だが、特技で吹き飛ばすのを諦めただけで、全て諦めた訳では無い。特技を潰された恨みもある。絶対に中の奴らを見返してやる。

だが、特技以外に自信は無い。腕力で向かっても特技より弱いだろう。どうするべきか悩み、まずは相手をよく観察して対応するべきだと家の周りをぐるぐる回って突破口を探す。
ひとついい場所があった。煙突には蓋が無い。入ってしまえばこちらのものだ。
屋根に登り煙突へ飛び込む。が、飛び込んでからふと思う。
煙が出ている煙突って事は下は火が点いてるんだよなと。
思った時にはもう手遅れ。
下で沸かされていた湯にドボン!!
熱つつつ!!と叫ぼうとして……叫ぶのをやめた。
熱くない。というか、まだ少しぬるい。
沸かしきって煮えたぎる前に落ちたのだ。どうすればいいか分からなくなり、ゆずの香りのする湯に浸かったまま硬直して奴らを見る。
奴らも驚きと戸惑いの表情で見ている。

「ぉお、オ…オオカミさん、湯加減はどうですか?」
奴らの1人がそう声を発した。その問いで理解する。
「まだちょっとぬるいけど、ゆず湯にするならこのくらいでいいのかもしれない」
そう、ここは風呂場だ。
最初の特技の事やコイツを見返してやろうとしていた事など頭から抜けてしまったオオカミはゆずの香りを堪能して帰って行ったのでした。
(ゆずの香り)

三匹の子豚のオマージュ、ゆず湯は少しぬるめにして、浮かべた終えたゆずは水アカ除去掃除などに使うと良いよ。

12/22/2024, 12:24:24 PM