すこーん

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「そんじゃ、良いお年を。星姫さん」
情けない。年越しまで一緒に居ませんか、だなんて心の中では一番最初からずっと思っていた癖に、それを言う時になるとそれとは真反対の言の葉が口から飛び出ていく。
ぽろぽろと外は粉雪が花びらのように舞っていた。星みたいだ、なんてうっとりと眺めていた彼女をぼんやりと微睡みの中で思い出す。
10時半。いつもより何倍も遅い彼女の帰りの時間。それに、今日は元旦の前日。けど、だからと言って彼女が育てている星の子達はそんなの関係無しに母を待っているだろう。中には夢の中の子もいるだろうが、躊躇して、真反対の事を言ってしまったのはその所為でもある。
ぱちくりと彼女が瞬きをする。

ああ、ごめんな。こんな弱虫な俺のせいで。
貴女の、今年の最後を奪う訳にはいかなかった。
「……私が、一緒に年越しまで居たいと言ったら?」
「……え、……あ……」
こんなこと、あっていいのだろうか。
良いお年を、で終わる筈だったその後悔は、あけましておめでとうで始まるという嬉しさに変わった。


「良いお年を」ワルロゼ

12/31/2024, 1:35:04 PM