「快晴」
君が好きだった空を知っている。快晴の空。
あらゆる自然法則のプログラムが互いに干渉し合って形成された、一瞬の雲の形を写真に納める私と違って、君は今後一切雨など降らないかのような自由な空の下で、いつもそれを見上げていた。
出かける時はなるだけカメラを持った。世界は止まらないもので、その流れの全てが分かったとしても、流れた全てを元居た場所に戻すことはできない、とされている。
私はそれを信じきってはいない。覚えてさえいればいつかは、大好きだった瞬間を寸分違わず再現できる、なんて、漠然とした期待にいつも動かされていた。
現像した写真とPCの中のデータは、いわば私の外付け視覚メモリーだ。焦っている。この世界にあるほとんどのことが、私が記録しないまま終わってしまう。記録しないと、忘れてしまう。
解放されたのは、快晴の空の下だった。海へ続く下り坂で、君は僕を追い越してときどき振り返る。雲一つ無かった。君はきっといつになっても変わらないのだから、晴れを待って、またここに来れば良い。首に下げたカメラから手を離して、僕も走った。
4/14/2026, 9:50:22 AM