作家志望の高校生

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僕の好きな人は世界一かっこいい。
好きな人、なんて言うのも烏滸がましいかもしれない。
世界で一番かっこよくて、キラキラしていて、誰にでも笑顔で夢を届けてくれる人。
俗に言う、推しだった。
男で男性アイドルユニットを推していると、時々珍しいなんて言われることがある。
けれど、彼の魅力を考えれば、性別なんて関係ないだろう。
同担拒否なんて幼稚な真似もしない。
彼は僕のものではないし、あの輝きが世から見られないなんて勿体ないにも程があるからだ。
僕はあくまで数多いるファンの一人として、ライブのその一時で夢が見られればいい。
あとは、二次元的な画面越しに見て、喜んで、勝手に頬を染めるだけ。
部屋にたくさん置いたグッズのおかげで、どこを向いても推しと目が合う。
写真集もポスターもアクスタも、穴が空くほど見つめたけれど、やっぱりライブで見る生の顔が一番綺麗だった。
そんな僕も、もう何度目か分からないライブ参戦だ。
予約戦争に負け、抽選にも負けた時はこの世の終わりを覚悟した。
が、キャンセル待ちで奇跡的にチケットを入手できたのだ。
この世に一人、彼の顔を拝めなかったファンがいると考えるとなんだか申し訳ない気もするが、せっかくチャンスを掴んだのだ。存分に楽しまなければ損だろう。
周りの迷惑にならない程度にペンライトを振り回し、コールを全力で叫び、なんだかもう夢うつつだった。
ステージはずっとキラキラしていて、メンバーとの生の掛け合いも、弾けて光る汗の玉も、全部全部宝物だ。
ライブが終わってぼんやりしたまま、物販で散財すること数十分。
財布は随分軽くなったものの、心は満足感でギッチギチなので良しとする。
口に出して愛を叫ぶことが随分減ったこの現代社会において、思う存分、好きな人に愛を叫べるライブというのは中々貴重なのだと思う。
だからなのか、普段は人前で喋るなんて大の苦手なくせに、コールの時だけは、たくさんたくさん叫んでしまう。
会場特有の大きなスピーカーの力強い重低音が、同じように愛を叫ぶ同胞の悲鳴じみた声が、何より、あまりにキラキラな推しの顔面が、僕の心から恥の概念を消し飛ばしてしまうのだ。
明日は第二公演。まだまだ、彼への愛は叫び足りない。
喉ケア用の飴を転がしつつ、明日のコールの復習にも余念は残さないのであった。

テーマ:愛を叫ぶ。

5/12/2026, 8:50:07 AM