落花生。
ピーナッツまたはナンキンマメと呼ばれる。一年草である。
「へー。花の根本が伸びて地面で実になるから落花生っていうんだ」
俺は兄のプチ知識を聞きながら、ビーナッツのからを割って、中の実を食べていた。カリカリとした歯ごたえを楽しみながら、ビールを飲む。
この時間のために、バイトを頑張っていると言ってもいい。
一ヶ月に一度、兄はこうして俺をねぎらっているのか、ビールとおつまみを用意して、ともに飲む時間を作ってくれる。
今日のつまみは俺の大好きなピーナッツである。なお、俺以上に兄のほうがピーナッツを好きだ。しかも、殻付きの。
俺はからをその都度むいて食べるのが好きだが、兄はあらかじめすべての殻をむいてから、まとめて食べるのが好きだ。
兄が全て自分の分をむき終わって、これからつまもうとしたときだった。
「あっ」
缶ビールを取ろうとした俺の手が、兄のピーナッツの皿に当たって、ダイニングテーブルの下にピーナッツが落下した。
全てのピーナッツが床に散らばる。
俺たちの間に沈黙が訪れる。
兄の眉間に深いシワが寄せられる。
コンビニに兄の分のピーナッツを買いに走ってすむなら、俺は今すぐスウェットで走っていけば済むことだ。
しかしだ……兄は殻付きピーナッツをむくことに意義を見出しているところがあるのだ。
俺はまだむいてない殻付きピーナッツを兄にあげると、つまみ無しでビールを飲んだ。さみしかった。
流石に気の毒に思ってくれたのか、兄が一つ分けてくれた。
一個だけ。
お題:落下
ピーナッツの実のなり方を間違えて書いてたので修正しました。
6/19/2023, 5:13:17 AM