詩『河川敷』
昔、おじいちゃんと河川敷を散歩した。
沈む夕日を見ながら、
「夕日はまるで青春の涙と思わんか?」
急にそんなことを聞かれた。
燃え尽きることも出来ず、
やり残したこともいっぱいあって、
濃く朱色に染まるのは、
泣いて腫らした目のようじゃ。
「どうしたん? じっちゃん」
「詩人みたいじゃ」
おじいちゃんは耳を触りながら、
聞こえない振りをして歩きだした。
…照れたんだろうか?
通夜の深夜。
そんな思い出を話したら盛り上がった。
みんなが眠りだした頃に祖母が、
僕に近寄って話しかけてきた。
「さっきの話しは聞いたことがある」
そう言ったあと祖母が教えてくれた。
それは少し長かった。
おじいちゃんの夢の話。
戦争や家族のためにあきらめたこと。
それなのに子供の死もあった。
沈む夕日を見て、
悔しくなったらしい。
自分の命も長くないと思ってたから。
そして、
自分と同じ夢を追うあんたが、
夕日みたいに眩しく感じたんだと言う。
青春とはあきらめないこと。
どこかのドラマのセリフっぽいが、
おじいちゃんの大好きだった言葉らしい。
「がんばるんよ」
「あきらめなきゃ死ぬまで青春だから」
「これも、おじいちゃんの言葉」
「あー見えてキザだったんよね。ふふ」
翌日から沈む夕日を見ると、
脳内の映像に、
字幕スーパーが出るようになった。
でっかく、
「青春」だ。
あきらめるな!の意味だろう。
4/7/2024, 11:06:00 PM