日が沈むと、山はそれまでとは打って変わって不気味な様相を見せる。夜の山には生きている人間は一人もいない。だが、そんな闇に包まれた山に、人知れず迷い込んだ者たちがいた。
あくる朝、一人の村人が山の中で見慣れない花を見つけた。その花は朝日を浴びて透き通り、不用意に触れればたちまち砕け散ってしまう硝子細工のように無垢な輝きを放っていた。
村人は花を無視して仕事を始めた。村人は知っていた。硝子細工の花の下には、永遠の愛を誓ったいたいけな子供たちが、二人静かに眠っていることを。
(繊細な花)
6/26/2023, 3:06:20 AM