—船灯の恋文—
海の上の船灯が、不規則に点滅している。
「どんなメッセージを伝えているのかな」その灯りを見て、姉は言った。
「うーん、何だろう」当然弟も分からない。
二人の頭の中には、映画で見た愛を伝え合うシーンが浮かんでいる。そんな何かだろうな、と二人は考えた。
「どうしたんだい。こんな夜に、二人で外を見て」祖父がやって来た。
「おじいちゃん。あれ、何て言ってるの?」船灯を指差して、姉が訊いた。
祖父は灯りを見た。
——悪かった。
——もうすぐ帰れるから。
——仕方ないじゃないか。
片側のメッセージしか分からないが、きっと仕事が長引いているせいで夫婦喧嘩をしているのだろう、と祖父は踏んだ。
「何て言ってるの⁈」姉は興味津々だ。弟も目を輝かせている。
「これは……、『愛』だ」祖父は答えを絞り出した。
夫婦喧嘩、これも愛の一つだろうと考えたからだった。
「やっぱり!ロマンチックだね!」
「うん!」
姉弟は盛り上がった。
祖父は静かに部屋を出ていった。
お題:消えない灯り
12/7/2025, 12:50:22 AM