俺には才能がある。
なんの才能かって?
絵の才能さ!
昔から賞を取り続けてるし、
正直、俺は天才だと思う。
テレビに取り上げられたぐらい俺は絵が上手くて、
そこらのやつとは違う。
おまけにそこそこ顔もいい。
学校では、何をしなくても人が周りによってくる。
俺は所謂陽キャってやつだろう。
俺がひょうきんなことを喋れば皆笑い、
俺が悲しいことを喋れば皆泣く。
あぁ、なんと素晴らしい世界だ!
学校は俺の帝国なのだ!
そう、本気で思ってた。
だが、ある日、俺の帝国は終わりを迎えた。
転校生がやってきた。
転校生は男だった。
そいつは何でもちちょいのちょいでやってのけるようなやつだった。
しかも、顔がその辺の下手なアイドルよりもいい。
しかも、面白い。
しかも優しい。
俺と違って。
だから、その日を境に、
俺より、そいつのが人気になった。
取り巻きも、そいつのとこにいった。
でも、絵、だけは。絵、だけは。
負けないって。
思ってた。
そいつは、俺より、絵が上手かった。
俺みたいな上辺だけの絵とは違う。
ちゃんと作り込まれて、想いが詰め込まれた、
宝石箱みたいな、それでいて、繊細な絵。
綺麗だった。
ある日、そいつに聞いたんだ。
「お前。絵、大会とかに出さねぇのかよ…。」
そいつは答えた。
「僕なんて、君と比べたら、まだまだだよ。」
って。笑顔で。
そいつの手は、
努力の滲んだ手を、してた。
そいつの作る世界は、どれだけ、
俺を壊したら気が済むんだ。
やめてくれ。
お願いだから、
俺から。
何も、
奪わないで…。
心の灯火が、そいつのひと吹きで消された。
俺の絶望に満ちた表情を見て、
そいつは、
俺に、口付けをした。
「かわいいね」
って。
9/2/2024, 2:01:24 PM