16 カラフル
世の中をもっともっと、カラフルにするために。あらゆる差別をなくすために。
そんな理由で、企業でロボットを一定数雇用するように、という法令が施行された。
僕はフツウの人間だけど、今日からロボットとして生きる。法が定めた「ロボット」の定義は「体組織の3割以上が機械であること」だ。
僕は生まれながらに四肢がやや不自由なので、この機会に義肢に替えてもらった。必要な費用はすべて会社から出ている。僕が人間からロボットになることで、会社はしちめんどうくさい研修や大がかりな環境整備をすることなく、国が定めた基準をクリアできるのだ。今日も明日も、社会の風景になんら変化はない。ただただ僕の日常から不便が減り、ラッキーなだけ。
実際にはみんな、カラフルな世界なんてものはそれほど求めていないのかもしれないね。
君はどう思う?
ところで僕の腕、かっこいいでしょ。せっかく会社の金だし、最新の義手にしてもらったよ。ほんと運がいい。生まれは人間だから、これって結構、いいとこどりだよね。
ん?なんでそんな怖い顔してるの?
え?君、ロボットだったの?僕の会社、採用試験受けて落ちたの?
……やだなぁ。そんなに怒らないでよ。ていうか早く言ってよ……いくらロボットが被差別階級だからって、隠さなくても。
ねえ、お願いだから、そのフォークを下ろして。そんなに怒らないで。
ごめんってば。ねえ。まさか刺さないよね?
5/1/2023, 10:53:42 AM