300字小説
キミが残してくれたもの
毎年、年末になるとキミは『1年間を振り返る』と言って、記録をつけていた。
『キミのような長寿種と違って、ボク達、短命種にとっては1年、1年は貴重なものなんだ。だから、後で思い返す為にも、こうして記録をつけておくんだよ』
キミがいなくなってから、ボクはそれまで以上に退屈になった。キミがいたときは楽しかった季節の移り変わりも、空の色も、人の営みも、もうボクの心を動かすことはない、
でも……。
「そうか、あの年はあんな事があったんだ。この年は……」
キミの記録を読むとき、ボクは長い生の中で色鮮やかに輝いていた日々のことを思い出す。
キミが自分の為と言いつつ、残してくれたもの。今日もボクはそれのページをめくる。
お題「1年間を振り返る」
12/30/2023, 12:10:00 PM