小音葉

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小さな肩に運命とやらを背負い、君は旅をする
戦わずとも血は流れ
送り出すことに慣れない瞳へと降り積もる
灰より淡く、雪のように儚く
褪せた世界を乗せて飛ぶ
一人では生きていけないくせに
まるで羽虫のようだ
片手で握り潰せる程度の希望なんて
立ち止まってしまえ、眠ってしまえばいいのに
棘から滲む罰を抱いて、君は笑みを崩さない

君を愛してなんかいない
初めからずっと、気持ちが悪いと思っていたさ
枯れた花々を屠り、報われない片想いを続けてる
靴裏に染み付いた腐臭、似合わない嘘
群がる羽虫と同じように、心底嫌っているとも
ある意味、想ってもいるけれど
だって化け物みたいだ
串刺しの蛮勇を吐き出して、華々しく散る為の機構

折れることを許されない
細枝から咲かせる大輪の花
壊れないよう、大切に、壊れないように
調整される不可視の炎
魘されてようやく迎える朝に、青い月を浮かべる顔
とっくに見飽きた辛い海
飢えているくせに、本当は枯れそうなくせに
絞り出す汎用の笑みが大嫌い

僕が知っていることを、君も知っているのだから
僕にぐらいは打ち明けてしまえばいい
君と出会った記憶の奥で、またいつでも迎えよう
蓋を開けて解き放つ
口を開けて飲み込む
そうして夢の終わりまで手を引いて
共に落ちて行きたいのに
君の足音はまだ聞こえないな

(静かなる森へ)

5/10/2025, 11:16:15 AM