駄作製造機

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【君の目を見つめると】

『李梨花〜?早く入りなさ〜い』

玄関先で佇む幼女。

ドアの前にしゃがみ、綺麗にラッピングされたピンクの袋を両手に抱える。

『李梨花?って、、何それ。』

彼女の母親は彼女が抱えている物を見つめギョッとした顔をする。

『わかんない。ここにあった。』

『あらそう。早く入りなさい。』

母親は彼女の小さな手を引き、家の中へ入った。

ーー

袋の中身は可愛いクマのぬいぐるみだった。

『わぁ〜!かわいい!』

李梨花はクマのぬいぐるみをギュッと抱きしめ、綻んだ顔をする。

『お母さん!わたしいっしょうたいせつにする!』

『ああそう。よかったわね。』

あまり子供に関心がないのか、母親はご飯を作りながら女の子の方を見ずに答える。

女の子は自室に赴き、ベッドの上にクマのぬいぐるみを置いた。

ーーーーーーーーーー

『李梨花ー。明日入学式でしょ。早く寝なさい。』

お母さんは今日も少し口うるさい。

『はーい。』

明日から高校生。

希望していた学校にも入学できたし、新しく使うリュックや腕時計も買った。

楽しい友達できるかな。

なんて期待を寄せながらスマホを触る。

ベッドの端にはいつの日かプレゼントでもらったクマのぬいぐるみが。

どんな時も一緒にいたし、毎日抱きしめて眠っている。

『お母さん、前まであんまり私に関心なかったのにね。クマ郎。』

ぬいぐるみを抱きしめながら話しかける。

クマ郎は私が泣いている時もどんな時も寄り添って共に過ごしてくれたいわば私の一部だ。

でももう黒く薄汚れちゃった。

洗濯しないとな。

ジッとクマ郎を見つめる。

クマ郎の目、、何だかガラスっぽい。

『君の目、、何か変、、』

右目がおかしい。

更に注意しながら見ると、瞳孔の部分が動いた。

『これ、、、カメラ?』

ジイィッと更に見つめる。

誰かが見てる?

そういえば、この人形は玄関前に置いてあった記憶がある。

誰かがこの部屋を見ていた、、

私の姿を、成長をずっとずっと、、

そう考えると恐ろしくなり、クマ郎を窓の外へ投げた。

クマ郎の目を見つめると、カメラが埋め込まれてたなんて。

今まで気づかなかった。

体が震えて息が荒くなる。

目なんか見なきゃよかった。

4/6/2024, 11:21:41 AM