【あいまいな空】
「今日の東京都心のお天気は変わりやすいでしょう」
テレビの中のキャスターは、淡々とそう告げた。トーストを齧りながら、ふと窓の外に目をやる。今は雨は上がっているみたいだった。ただ、重い灰色だけが、窓枠を覆い尽くしていた。
ここで別れ話をした朝も、こんな景色が見えていた。なんでそんな話になったのか、よく覚えてはいない、というか、よくわからなかった。ただ、私が優しすぎるから、いい人だから、ごめん、ただ、絶縁はしたくない、とあなたは言った。
「中途半端でごめん」
優しいあなたのことだから、どこまでが本当か、嘘かもいまだにわからない。ただ、優しいことだけは、本当だと信じている。別れたくない、と言ったら、そっか。とあなたは返してくれた。あなたはどこまでも優しかった。ただ、その曖昧さが、あの日の一度きりの別れたいと言う言葉が、私の心をぐらつかせている。
もうやめよう。そう打って、送った。あなたのあいまいは私には毒だ。折り畳み傘をカバンに入れて外に出ると、微かに青空がのぞいていた。あの窓枠からしか空を見ていなかったのだと、ふと気付かされる。
優しくてあいまいなあなたへ。私はあなたを通さなくても、世界を見られるようになってみせるよ。
6/15/2024, 5:53:55 AM