誘喜

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 別れ際に、貴方はそっと振り向いた。何かを悲しむ様に。何かを憐れむように。それは僕の心に、僕の頭に鮮烈に焼き付いた。
 貴方の目は、何を語っていたのか。何を考えていたのか。今でも僕は何も知らない。ただ、「別れた」という既成事実だけが僕を行動に駆り出した。そして、自分を騙したという、嘘さえも、自分を自己嫌悪に陥らせることを助長させた。

 別れ際に、僕はそっと振り向いた。貴方は誰だという疑問とともに海の底へと沈んだような。そんな目をしていた。
 僕は何も知らない。貴方は何処へ行くのか。貴方は何処にいるのか。ただ、「会いたい」と考える自分に呆れる。だからもう、僕は何も知らない(さっきから何を書いているんでしょう?)。

9/28/2024, 10:10:35 AM