冬山210

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『一筋の光』

一筋の光が、蜘蛛の糸のように垂れてきたから。

私はそれを絡めとり、
どうにか登れないものかと考えた。

けれども当然光は捕まえられなくて、
するりと指をすり抜けていく。

それが何とも不思議に思えた。
熱もない、形もないものが、確かに指をすり抜ける。

これは助けではないのだ。
これは救いではないのだ。
窓から差し込んだだけの、ただの光。

この先の私の人生を照らしてくれるわけでもない。
これまでの私の人生を包み込んでくれるわけでもない。

それでも例えば、
今この瞬間私の瞳を少しでも輝かせてくれるのなら、
この光にも価値があるのだと思えるだろうか。
意味があるのだと、思えるだろうか。


いつか、いつかあなたが、私に救いの光をくれるの。
今はただそれを待つわ。

11/5/2022, 3:56:44 PM