『一筋の光』
一筋の光が、蜘蛛の糸のように垂れてきたから。
私はそれを絡めとり、
どうにか登れないものかと考えた。
けれども当然光は捕まえられなくて、
するりと指をすり抜けていく。
それが何とも不思議に思えた。
熱もない、形もないものが、確かに指をすり抜ける。
これは助けではないのだ。
これは救いではないのだ。
窓から差し込んだだけの、ただの光。
この先の私の人生を照らしてくれるわけでもない。
これまでの私の人生を包み込んでくれるわけでもない。
それでも例えば、
今この瞬間私の瞳を少しでも輝かせてくれるのなら、
この光にも価値があるのだと思えるだろうか。
意味があるのだと、思えるだろうか。
いつか、いつかあなたが、私に救いの光をくれるの。
今はただそれを待つわ。
11/5/2022, 3:56:44 PM