「だから我慢しないでって言ってるじゃん!」
女性の叫び声が狭い部屋に響く。女性の目の前に土下座をして座っている男性は俯いたまま微動だにしない。
「いっつもいっつも我慢してさ、私に何を求めてるの?」
「……何も無いって」
「……はぁ……」
女性側が諦めてため息をつく。いつもこうだ。何でも言い合うという約束で結婚したのにいざ結婚して数週間経てば男性は隠し事だらけだった。
「……隠し事するのはいいけどさ、私に分かんない様にしてよ」
「……してないって」
「もういい」
最初の頃は信じていた。何も無いと言い続ける彼を信じていた。段々と些細な事が苛立つようになっていった。
靴下を放っておくところ、食器の洗い方が雑なところ、ビニール袋をぐちゃぐちゃにしておくところ。1つずつ注意するのもウザイだろうと思って自分で直すようになっていき、意見を何も言わない彼に段々と覚えていく苛立ち。
「……ごめん、次からはちゃんと」
「もういい。好きにすれば」
塵も積もれば山となる、とは正にこの事なのだろうか。
『些細なことでも』
9/3/2024, 1:26:16 PM