えりむ

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哀愁を誘う秋の風に連れられて、
僕は真っ赤に染まった紅葉並木の下を歩いていた。
平日の夕方四時、人通りは少なく、木の葉が風に揺れる音だけが耳に入る。
ふと人の気配を感じ、目を向けると、小さな女の子が落ち葉を集めて遊んでいた。
静かな自然の美しさを忘れがちな現代に、こうやって自然と戯れる子供を見るのは
久しぶりな気がする。
そんな風に思っていると、女の子も僕の気配に気づいたらしく、
こっちを見て僕に笑いかけた。
そして、彼女は僕の所に駆け寄り「秋の宝石をあげる」といって、
綺麗な紅葉を手渡してくれた。
大人たちは、紅葉を楽しんだ数週間後には、せっせと落ち葉掃きをして
綺麗な葉も燃えるゴミと一緒にしてしまうけれど、
この子の目には、紅葉は宝石のように綺麗なものとして映っている。
どうかこの少女が大人になっても、この感性を忘れずに
今と同じ目で自然を感じられますように。

11/4/2024, 12:40:38 PM