抹茶餅

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「────でさ。俺はとりあえず、東京の大学で輝かしいキャンパスライフを迎えようと思うんだけども。」
「はぁ。」
心底どうでもいい。私は無関心な溜め息を零す。
幼馴染の彼とは18年。生まれた時からずーっと文字通り一緒にいた私達はいつしかそのまま高校生になっていた。けれど気持ちは18年もいれば変わるもの。それこそ幼少期は彼にべったりだった私は、時を経て段々と広がる日常と同時に幼馴染の興味さえも薄れさせていった。
高校だって、お互い家が近くの高校を目指した結果が一緒の高校になったというだけ。今更進路がなんだって言うのだろうか。
目の前の彼はつまらなそうに頬ずえをつく私を見てにやりと笑う。
「そんな顔すんなよ〜。…お前、一緒に来ない?」
「なんでよ。私、東京の大学には興味無いんだけど」
大学の誘いに乗らない私に今度は彼が大袈裟にため息をついた。
「これまでずっとさ。俺たちずっと一緒だったじゃん?それこそ家も隣だし、小さい頃はお前が俺の後ろをついて行ったりもしたし、逆に今はお前の後ろを俺が追いかけてる。」
「…何?突然。それと進路は関係無いでしょ?」
「関係あるよ。」
私の言葉に彼はキッパリと断言した。私は思わず眉間に皺を寄せる。「まぁ聞いてよ」と彼は私の頬ずえしていた手を取り握った。
「これまでずーっと何をするにも一緒だった俺達が突然離れ離れになっても生きていけないと思うんだ。だって、一緒だったんだもん。だからさ、これからもずっとお前とは一緒に居るべきなんだ。俺もそりゃ東京なんてどうだっていいけど、そこでなら俺達の仲を離してくる同級生もいないし、わざわざ隣の家に行かなくても一緒に同じ部屋に住めばいつだって会える。」


これまでずっと一緒ならこれからもずっと一緒にいるべきなんだ。

7/12/2023, 2:29:27 PM