—小さな番人—
いつもの場所——公園のベンチの下で、ネコがこちらをじっと見つめている。
片目が潰れた、茶と白の三毛猫だ。
「あのネコ、いつもいるな」
俺は友人に言った。
「あのネコね。あのネコとは関わらない方がいいよ」
「どうして?」
「『呪われたネコ』なんだ」
何故、という顔をした俺に、友人は詳しく事情を説明してくれた。
半年前、この公園である少女が誘拐された。
結局、天は味方をせず、少女は帰らぬ人となってしまった。
なんとその日、少女はあのネコを探していたのだそうだ。
ざっくり言うとそんな事件があったらしい。
ここに来て日が浅い俺は初耳だった。
「あのネコが逃げ出さなかったら、その女の子は無事だったんだ」
友人は最後にそう言った。
夕方、友人と別れた後、どうしてもあのネコが気になってもう一度公園を訪れた。
「なぁ」
俺は、その呪われたネコに話しかけた。
しかし、ネコはこちらを激しく威嚇する。
「俺は敵じゃないよ」
干したイワシを目の前に置いた。
ネコは匂いを嗅ぎ、イワシにかじりついた。相当お腹が空いていたようだ。
「君はあの日、女の子を守ろうとしたんじゃないか」
潰れた片目を見る。
「でも悲しいけど、女の子はもう帰ってこない。一人は寂しいよ。一緒に帰ろう」
俺はネコを抱えようとしたけれど、激しく抵抗された。
「わかった。また来るね」
俺は立ち上がり、公園を後にした。
その場を見ていない俺に真実はわからない。
だがどうしても、あのネコが少女がいなくなったあの場所で、帰りを待っているような気がしてならないのだ。
明日は、ご飯と一緒に花束を持って行こう。
俺はそう心に決めた。
お題:小さな命
2/25/2026, 9:34:18 AM