とある恋人たちの日常。

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 出張に出て数日経った。
 俺が住んでいる土地から離れた場所で、気候も違う。そして本日最後の救助の最中から雨が降り始めていた。
 
 救助後、他の隊員に患者を託して、雨の中に他に救助を待つ人が居ないかを確認する。救助を求める人数を確認して、撤収しても問題ないと連絡が入った。ヘリに乗って宿舎に戻ろうとするが、足を止める。
 
 雨が服に染み込んで身体が重い。
 けれど、心も重かった。
 
 今回の出張は、何回目かの出張で同棲している恋人が心配になる。
 元気な笑顔で、背中を押してくれる彼女。出張から帰った後は隣に座る時にいつも以上に傍によってきたり、眠る時は背中から抱きついて離れない。
 だから、今回の出張を伝えた時に固まる表情が忘れられないし、心配になった。
 
 出張に出る前、彼女が好きそうな装丁のノートを買った。寂しくないように彼女への気持ちを沢山綴ってきた。
 電話やメールで連絡すれば良いとは思うが、アナログな文字にこだわった。
 そこに温もりがあると思ったから。
 
 空を見上げると、顔に雨が容赦なく叩きつける。
 
 早く。
 会いたい。
 
 
 
おわり
 
 
 
百三、雨に佇む

8/27/2024, 2:24:52 PM