題名 『ガラクタな俺の相棒』
ピッ⋯、ピッ⋯、ピッ⋯、と聞こえる無愛想な声。
足枷が着いた様に動かない僕のカラダ。
思えば全て、君中心だったな。
貴方が居たから僕が存在して、
貴方が居たから僕が生きていて、
錆びた僕のカラダを君はいつも塗り直してくれた。
でも、今日はペンキじゃ無くてサファイアの欠片が落ちて来た。
物にも寿命が有るなんて、僕は知ら無かったよ。
君の欠片が痛い。
いつもセットされているブラウンの髪の毛。
今日はぐちゃぐちゃだね。
サファイアみたいに綺麗な瞳からサファイアの欠片が次から次へと降ってくる。
ブリキの僕の身体では温度は感じられないけれど、きっと、きっと、電池の様に暖かいのだろう。
機械的な音が僕の中から聴こえる。
いつもとは違う。少しだけ、変な音。
死にかけのロボットに君は顔を埋める。
ガラクタな僕の腕を握って、嗚咽を漏らしてサファイアの欠片を落とす。
『御前が居てくれたから、俺はッ────、』
君の言葉を遮る様に黒い中に入っていった。
怖いな。怖いな。
耳から薄ら聴こえるのは君の嗚咽だけ。
泣かないで。泣かないで。
次は、戦闘機用ロボットなんかじゃ無くて家庭用ロボットに成りたいな。
戦わなくても済むし、何より君の隣に居られるよね。
ズタボロの僕を貰った時、君は少し顔を顰めた。
皆、皆、僕の事を嘲笑った。
剥がれる僕の肌を何度も付け直して、
取れる僕の腕を何度もくっ付けて⋯、
僕の事を"相棒"って言ってくれた。
僕はきっと何にも成れ無かった。
けど、君の"相棒"に成れた。
嬉しいな。嬉しいな。
いつか、また、君と逢える迄。
次は、家庭用ロボットに成れる日迄。
お休みなさい。
貴方が居たから、僕は君の"相棒"に成れたよ。
2023.6.20【あなたがいたから】
6/20/2023, 10:21:24 AM