天から、降り注ぐ雫が傘を濡らす。
雨の日は気分が憂鬱で、気が滅入ってしまいそう。
確か彼と別れたのもこんな雨の日。
浮気をしておきながら、泣いて縋る彼を私は容赦なく突き放した。彼の、身勝手さに吐き気がした。
それ以降、恋人を作るのが億劫になり、
おひとりさま生活謳歌している。
「あ。すみません……」
前方からの、歩行者とぶつかりかけよろめいた。
その時、目にとまったシャツに見覚えがあった。
彼が好んでいた服の柄で、古い記憶が蘇る。
「……奏?」
「た、拓人…どうして……」
雨音に紛れて、誰かが私の名前を呼んだ気がした。
振り返えると、そこに彼がいた。
声を失った私を彼が抱き寄せる。
「会いたかった。あの日からずっと」
6/1/2025, 12:07:03 PM