#ずっとこのまま
窓の外では、今日も同じ街灯が同じ色で光っている。
同じ時を繰り返しているみたいだ、と僕は思った。
朝は同じ音で目覚ましが鳴り、同じ道を歩き、同じ顔ぶれとすれ違う。教室の黒板も、駅のホームも、帰り道の自販機も、昨日と何一つ変わらない。
変わらないことは、楽だ。考えなくていいし、選ばなくていい。
「ずっとこのままならいいのに」
ぽつりとこぼした言葉は、誰にも届かず、部屋に溶けた。
変わるのが怖かった。
もし何かを失ったら?
もし今よりうまくいかなかったら?
今の自分を否定されるような気がして、足がすくむ。
それでも、ある日ふと気づく。
同じだと思っていた毎日が、少しずつ違っていることに。
昨日は気づかなかった花が咲いていて、
いつも無表情だったクラスメイトが笑っていて、
自分の声が、前より少しだけ大きくなっている。
変わらないと思っていたのは、世界じゃなくて、自分の目だったのかもしれない。
「ずっとこのまま」
その言葉は、止まりたい願いじゃなくて、ただ壊れたくないという祈りだった。
僕は窓を開けた。
夜風は冷たくて、でも心の奥を軽く叩くような風だった。
全部が一気に変わらなくていい。
一歩じゃなくてもいい。
今日と明日の違いが、ほんの少しでいい。
それならきっと、
「ずっとこのまま」は、
「ゆっくり進んでいく」という意味に変わる。
街灯は相変わらず同じ色で光っていた。
でも僕はもう、それを「同じ光」だとは思わなかった。
1/12/2026, 1:02:33 PM